理事長 内田
質問: サッカーのクラブチームで活動している子どもが、最近集中力に欠けているようで、疲労感を訴えることも増えてきたように思います。バーンアウト、という言葉もよく聞きますし、家庭で気づくことができる兆候や改善方法について教えてください。 回答: ご質問ありがとうございます。お子さんはクラブチームでサッカーを頑張っているのですね。長く活躍してほしいですから、あまり疲れすぎてしまうことも心配ですね。今日は、整形外科医として、慢性疲労の症状についての説明と改善方法についてお話ししたいと思います。 運動による慢性的な疲労は、パフォーマンスの低下、怪我のリスク増加、学業への影響をも、もたらす可能性があります。このような疲労を改善するためには、適切な評価と対策が必要です。まずは慢性的な疲労を抱えているかどうか、チェックしてみましょう。 【慢性的な疲労の評価基準】 慢性的な疲労を評価するには、以下のような症状が2週間以上続いているかどうかを確認します。 〇身体的疲労感:日常の活動で通常よりも疲れやすい。 〇回復の遅れ:通常の休息や睡眠後も疲労感が残る。 〇パフォーマンスの低下:スポーツのパフォーマンスが顕著に低下している。 〇集中力の欠如:学業や日常生活での集中力が続かない。 〇情緒不安定:イライラしやすく、落ち込みやすい。 これらの症状が2週間以上継続して見られる場合、慢性的な疲労の可能性があります。このような状態が続くと、心身に負担がかかり、スポーツ障害や他の健康問題を引き起こすリスクが高まります。 (このチェック項目はセルフチェック用の簡易なものです。複数の項目について問題を感じる場合には、心療内科での相談も選択肢のひとつです。) 【慢性的な疲労の改善アドバイス】 慢性的な疲労を改善させるには、まずは日常生活を安定させ、ストレスから離れることが重要になります。とても地味なアプローチですが、基本的なことを地道に続けていきましょう。 1 適切な休息と睡眠- 定期的な休息日の設定:週に少なくとも1日は完全な休息日を設け、身体が回復する時間を確保します。休息日にはお子さん自身が「何も決まった予定がない」という状況であることが大切です。
- 質の良い睡眠:十分な睡眠は身体の回復に不可欠です。夜間に8時間以上の睡眠を目指し、寝る前のスクリーンタイムを減らすことで睡眠の質を向上させます。
- バランスの取れた食事:タンパク質、炭水化物、脂質、ビタミン、ミネラルをバランス良く摂取します。特に、運動後はタンパク質と炭水化物を含む食事を摂ることで、回復を促進します。多様な食材を摂取するように心がけましょう。咀嚼や団欒も、食事をする意味のひとつと考えましょう。
- 水分補給:運動中だけでなく、日常生活でも十分な水分補給を心がけます。脱水は疲労感を増大させる原因となります。「喉が渇いた」と思うときには、すでに身体は脱水状態にあります。こまめに摂取できるような環境を整えましょう。
- トレーニングプログラムの見直し:トレーニングの強度、頻度、種類を専門家と相談し、適切なプログラムに調整します。過度なトレーニングは避け、回復を優先させる期間を設けることが重要です。この点は、SOL整形外科の理学療法士やトレーナーも協力することができると思います。ご相談ください。
- アクティブリカバリー:軽いジョギングやストレッチなど、身体を動かしながら回復を促すアクティブリカバリーを取り入れます。
- リラクゼーション技法:深呼吸や静かに目を瞑る時間をもつなど、ストレスを軽減するためのリラクゼーション技法を日常に取り入れます。
- 趣味や社交活動:スポーツ以外の活動にも参加できる時間と余裕を持ちましょう。さまざまな価値観に触れることで、心のリフレッシュを図ることができます。
- 定期的な医療機関でのチェック:慢性的な疲労の原因は多岐にわたるため、定期的に医療機関を訪れ、身体の状態をチェックしてもらうことが重要です。貧血など内科的な問題で疲労を感じる場合もありますので、ぜひ実施してください。
SOL整形外科スポーツクリニック
理事長 内田繕博