こんにちは。SOL整形外科の内田です。このコラムでは、患者さんやそのご家族から寄せられる質問に、整形外科医の視点でお答えしています。
今回のご質問は、剥離骨折について。剥離、という言葉がついていることで、骨折化骨折でないか迷われているという親御さんからのご質問です。
質問:
子どもが剥離骨折をしました。剥離骨折というのは、骨折なのでしょうか。それとも、軽いもので骨折ほど心配しなくてよいのでしょうか。
剥離骨折は骨折なのか?——骨折と剥離骨折の違いについて
「剥離骨折は骨折なのか?」という疑問はよく聞きます。
答えは「はい、剥離骨折も骨折の一種です」ということになります。「骨折」という言葉は幅広い概念を含んでおり、その中に「剥離骨折」も含まれます。そこで、今回は骨折全般の概要、剥離骨折の具体的な特徴、そして骨折の種類について、解説していこうと思います。
そもそも骨折とは?
骨折とは、骨に何らかの強い力が加わって、その構造が壊れる状態を指します。
外部からの衝撃や転倒、運動中の捻りなどが原因で、骨が折れたり、ひびが入ったりすることを「骨折」と言います。
骨折にはさまざまな形態があり、骨が完全に2つに分かれる場合や、わずかなひび割れが生じる場合も含まれます。
剥離骨折とは?
剥離骨折は、骨の一部が腱や靭帯によって引っ張られ、その小さな骨片が骨から剥がれるようにして折れる状態です。
たとえば、スポーツなどで急な動きや捻りが加わった際、腱や靭帯が骨についている部分に強い力がかかり、骨の一部が剥がれ落ちるような形で剥離骨折が起こります。
具体例で考えてみましょう
お子さんがサッカーやバスケットボールでジャンプをしたり、急激に方向転換をしたりするとき、足や手に大きな負荷がかかることがあります。
このとき、筋肉が急に強く収縮すると、その力が腱を通じて骨に伝わります。
骨が強ければ問題はありませんが、特に成長期の子どもは骨がまだ完全には発達していないため、この強い力がかかると骨の一部が剥がれ、剥離骨折を引き起こすことがあります。
剥離骨折と通常の骨折の違い
剥離骨折は、骨の一部が剥がれるようにして起こる骨折であるのに対し、通常の骨折は、骨が一部または完全に分断されることを指します。
剥離骨折は、骨と腱や靭帯の結合部分で起こるのが特徴ですが、通常の骨折は骨そのものに直接力が加わって折れるケースが多いです。
たとえば、転んで手をついたときに腕の骨が折れる「橈骨遠位端骨折」は、直接的な外力によって骨が折れる通常の骨折です。
一方で、剥離骨折は、骨に直接大きな力が加わるのではなく、腱や靭帯が骨を引っ張ることで起こるため、力のかかり方が異なります。
骨折の分類
骨折にはさまざまな種類があり、剥離骨折もその一つです。以下に、主な骨折の種類を説明します。
骨が一か所で折れる、またはひびが入る状態です。皮膚が破れることなく、骨が体内で留まっている場合を指します。
少し怖い話で恐縮ですが、複雑骨折とは、骨が皮膚を突き破り、外部に露出する状態です。このタイプの骨折は感染リスクが高く、治療に時間がかかります。
前述の通り、腱や靭帯に引っ張られて、骨の一部が剥がれ落ちるように折れる骨折です。比較的軽度の場合が多いですが、適切な治療とリハビリが必要です。
骨が圧力を受けて潰れるようにして折れる骨折です。特に背骨(椎骨)に多く見られます。これは、高齢者や骨粗しょう症の方に多い骨折の一種です。
長期間にわたって骨に繰り返し負荷がかかることで発生する骨折です。スポーツ選手に多く見られるこのタイプの骨折は、小さなひび割れが生じることが多く、通常の骨折のような大きな外力ではなく、微細なダメージが蓄積することで起こります。
骨が完全に2つに分かれる場合を完全骨折、不完全に折れたりひびが入るだけの状態を不完全骨折といいます。
不完全骨折には、骨にひびが入る「亀裂骨折」などがあります。
剥離骨折の治療とリハビリ
剥離骨折の場合、ほとんどの場合は手術を必要としません。
通常は、患部を安静に保ち、ギプスやサポーターで固定することで治癒を促します。痛みが落ち着くまで運動を控えることが大切です。
特に、子どもは骨が回復しやすいですが、成長期のため適切な治療をしないと骨の成長に影響を及ぼすことがあります。
剥離骨折から回復した後は、適切なリハビリテーションが重要です。リハビリを行うことで、筋肉や腱が再び正常に機能し、再発を防ぐことができます。
リハビリの内容には、ストレッチ、筋力トレーニング、バランス訓練などが含まれます。
まとめ
「剥離骨折は骨折なのか?」という疑問に対する答えは「はい」であり、剥離骨折も骨折の一種です。
剥離骨折は、腱や靭帯が引っ張られて骨の一部が剥がれ落ちるように折れる特殊な形態ですが、通常の骨折と同じように、適切な治療とリハビリが必要です。
骨折にはさまざまな種類があり、治療法や回復までの過程もそれぞれ異なります。お子さんが怪我をした場合は、早期に整形外科医の診断を受け、適切なケアを行うことが重要です。